語学学校初日、仲良しのラウラが、まるで、私の保護者のようについて来てくれました。 緊張の面持ちで門をくぐり、校長先生にご挨拶。 用意されていたのは、クラス分けの筆記テストでした。 学生時代からテストが大嫌いな私。 うわぁ・・・答案用紙見たの、何年ぶり?なんて呟きながら、解くこと30分。 その後、面接。 イタリア語での自己紹介、趣味、仕事、イタリア語を学ぶ理由などをイタリア語で話しました。 (とにかく単語と短い文章を箇条書きに読み上げた・・・みたいな感じでした。) イタリアに来ることを決めてから2ヶ月間、明けても暮れても勉強した私は、 簡単な日常会話はできるようになっていましたが、 何と言っても駆け込みの独学なので、自信があるわけがありません。
しかし、クラス分けの結果を見てびっくり。 プリモ(初級)ではなく、SECONDO(レベル2)のクラスになっていました。 これは私にとって小さな自信の反面、大きなプレッシャーとなりました。 そして、学校が始まり、私のイタリアでの生活は規則正しいものとなって行ったのでした。
授業は、当然ですがイタリア語をイタリア語で教わります。これが本当に難しい。 子どもの頃は、誰もがこうやって言葉を覚えたんだ、と妙に感心してしまいます。 先生がジェスチャー付きで、黒板いっぱいに書かれた単語をひとつひとつ教えてくれます。 黒板に書く単語は、なぜかすべて大文字。「大文字の方がはっきりしていて見やすいから!」 だそうですが、単語は普通小文字で書きませんか〜? (その内慣れてしまい、自分でもすべて大文字で書くようになってしまったけど・・・。)
私のクラスは少人数ですが、学校の廊下や休憩所では、 日本、韓国、中国、アメリカ、エジプト、フランス、ポーランド、イギリス、ドイツなどの 様々な人種が混ざり合い、共通語としてイタリア語を使うのは、とても不思議な光景でした。 (留学中は、これが当たり前なのです。)
授業は1日3時間。前半は「文法」、休憩を挟んで後半は「会話」。 途中の15分休憩では、皆、近くのBARにカフェを飲みに行きます。 バリスタ(カフェを入れてくれる人)が、私を見て、「ナカ〜タ〜!!」と言うので、 適当にあしらうつもりで、「あぁ、彼は私の友達だよ。」と言ったら、 私はそこで有名人になり、もうウソだと言えない状況になってしまいました。 (イタリア人にとって、日本人=サッカーの中田選手という印象が強いらしく、 街や公園でも、しょっちゅう「ナカ〜タ〜!」と言われていました。) 以来BARに行くと、「中田の友達が来たぞ。中田は元気か?」と聞かれ、困りました。 でもそのお陰で、サービスは良く、いつもおいしいカフェを飲ませてくれました。 「文法」の授業では、テキストに従って文法を学び、大量の例題を、順番に答えていきます。 毎日宿題が出るのですが、答えを書く以前に、問題の意味が分からないので、 辞書をひいて、コツコツやるしかありません。 (これが、本当に大変なんです。うぅ〜〜〜辛い!時間がいくらあっても足らず・・・。) 私はもともと勉強好きではなく、夜は遊びに出掛けるので宿題が終わらず、 広場で友達に答えを書いてもらったり、BARの店員に答え直しをしてもらっていました。 「会話」の授業では、前日に議題を決め、それについて話せるよう、単語を調べておきます。 同じクラスの、イギリス人、ポーランド人の女の子は、「文法」は苦手でおとなしいのに、 「会話」になると、自分の意見をペラペラと流暢に発表するので、本当に尊敬してしまいます。 日本人は、「文法が間違ってると恥しいから、話さない。」という人が多いですが、 まったく逆でした。何故だろう?
学校に通い出し、しばらくすると、授業がさっぱり分からなくなってきました。 週に5回だと、どんどん先に進んでしまうのです。 イタリア人に悩みを相談しても「PIANO PIANO!(もっと気楽に)」と言われるだけ。 (「PIANO PIANO!」はイタリア人の口癖です。様々な場面でよく使われます。) もともと小心者の私。 テラスで他の生徒たちは楽しそうに話したり、食事したり、リラックスして過ごしていますが、 私は勇気がなくて、皆の会話に入れず、居心地悪すぎ。 月に1度のクラス替えのテストで、レベルはTERZO(レベル3)と上がっていきます。 日中はアルバイトを始めたので、授業も夜18時からに変わり、周りも知らない子ばかりに・・・。 そして、とうとう授業について行けなくなりました。 私は、学生時代、特別デキル生徒ではなかったけど、落ちこぼれた経験もなかったので、 初めて味わう孤独感・・・。授業中、順番に差されても、私の所で止まってしまいます。 どうしよう・・・。 周りの生徒は、皆楽しそうに授業を受けています。 中には、授業中なのにオレンジを剥いて食べているアメリカーナ! 先生に当てられたら「手が汚れたので、洗ってきま〜す!」と教室を出て行ってしまったり・・・。 そんな中、大まじめな日本人生徒(私のコト)は、泣きそうな顔で、授業について行っていました。 先生は、私を哀れに思ったのか、放課後、居残り授業をしてくださいました。┐(´ー`)┌ 先生には、「こんなに喋れるのに、なぜ文法が出来ないの?」と、 今までと反対の事を言われ、より複雑な気持ちになったのでした。